相続税調査にAIを本格導入へ

人工知能(AI)の利用が各界で飛躍的に進展している中、税務当局でもその活用が進んでいます。国税庁は、今夏から全国で相続税調査にAIの導入を始めました。申告漏れなどの税務リスクが高く、調査の必要性がある事案について、AIを活用して効率的に選定し、これまで以上に深度のある調査を行うとしています。
AIで相続税調査の対象を効率的に選定
すでに税務調査の必要性が高い事案の判定にはAIを活用していますが、今後は提出されたすべての相続税申告書をAI判定の対象とし、税務リスクに応じてスコア化を行い、税務調査の要否などを判断します。
これにより、AIが選定した相続税の事案に対して、税務調査を開始することになります。
相続税の申告件数は過去最高を更新
令和5年分の相続税の申告書の提出に係る被相続人数は15万5,740人であり、全死亡者数に占める相続税申告書の提出割合(課税割合)は9.9%となり、昭和42年分以降で過去最高を記録しています。
相続税の申告件数等の増加に伴い、調査対象を選定する際の事務効率化が課題となっており、AIの活用によって、増加する調査必要度の高い事案への対応と、調査可能事案の拡大が期待されています。
AIが申告データをスコア化しリスクを分析
具体的なAIの活用方法としては、全国の税務署に提出されたすべての相続税申告書データを集約し、それぞれの申告書データに対して申告漏れなどのリスクをスコア化します。
スコアは0から1の範囲で細かく設定されます。
申告漏れなどの税務リスクを判定しスコア化する際には、過去の調査事績や、申告漏れが発生した相続税申告書、財産債務調書などの法定調書の情報をもとに、申告誤りの傾向を分析します。
調査方法の判断にもAIスコアを活用
現場の各国税局や税務署は、このスコアなどに基づいて、それぞれの事案について税務調査の要否を判断し、調査を行う場合には、実地調査とするか、電話などによる「簡易な接触」とするかを決定します。
一度きりの相続税申告に対応する新体制
法人税や所得税のように毎年継続して申告が行われる税目と異なり、相続税の申告は一度限りであることから、今後はこのようなAIを活用した調査体制をより一層強化していく方針です。
税務調査とAI
法人税や所得税の調査では先行して人工知能(AI)が活用されています。
追徴税額も増加していることからその効果は大きいとされています。
国税庁では、デジタルを活用した手続や業務の在り方の抜本的な見直しとして税務行政の「DX」に取り組んでいく方針を明確にしています(税務行政の将来像2.0)。
その柱の一つが「課税・徴収の効率化・高度化等」で、税務調査にも今後積極的に活用していく方向です。
この記事は2025年10月に書かれたものです。
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