不正パターンで中小法人5万件超を選定調査

AIデータ分析を活用した調査事例を国税庁が公表
法人企業の税務調査においても、AIによるデータ分析を活用してリスクの高い法人を抽出し、不正が疑われる事案を選定する手法が本格化しています。
国税庁によると、令和6事務年度には約339万件の税務署所管法人(資本金1億円未満の中小法人)を対象にAIによるデータ分析を実施し、約49万社を抽出しました。その後、税務職員が申告書や国税組織が保有する資料情報などを分析・検討した結果、最終的に5万件を超える事案について税務調査を実施しています。
AIを活用して選定された調査事案は、不正所得金額や追徴税額が通常の法人調査と比べて高額となる傾向があり、AIによる分析の有効性がうかがえます。
AIと調査官が連携して調査対象を選定
国税庁では、まずAIを活用した予測モデルにより調査の必要性が高い法人を抽出します。予測モデルでは、「高・中・低」のリスク評価に加え、「売上」「原価」「経費」などの項目ごとに不正パターンを判定します。
その判定結果を踏まえ、調査官が申告書や資料情報などを詳しく分析した上で、実地調査を実施する流れとなっています。
原価の不正で約3億6,000万円を追徴した事例
AIと調査官が想定した不正パターンが的中した事例として、決算書を分析した結果、原価のうち外注費に着目して調査を行い、実態のない外注費を計上していたことが判明したケースがあります。この事例では、法人税と消費税を合わせて約3億6,000万円の追徴税額が課されています。
また、「原価」に関する不正事例としては、次のようなケースも公表されています。
- 偽りの請求書を作成し、金銭の貸付けを外注費に仮装して計上していた事例(追徴税額:約1億円)
- 不正加担者に単価を水増しした請求書を発行させ、外注費を過大に計上していた事例(追徴税額:約9,000万円)
売上・経費でも不正事例を公表
「売上」に関する不正パターンでは、売上伝票を破棄し、その分の現金売上を除外していた事例があり、法人税と消費税を合わせて約7,000万円の追徴税額が課されています。
また、「経費」に関する不正パターンでは、偽りの出勤表などを作成し、架空の人件費を計上していた事例があり、追徴税額は約1億5,000万円となっています。
AIの進化により調査精度はさらに向上
AIの導入によって税務調査の基本的な選定基準が大きく変更されたわけではありません。しかし、AI技術は今後も進化し、これまで以上に細かなデータ分析が可能になることが見込まれます。
そのため、企業においても日頃から適正な経理処理や証憑書類の整備を徹底し、税務調査リスクの低減に努めることが重要になるでしょう。
AIデータ分析
大量で多様なデータを高速かつ高精度にAIに解析させ、一定の傾向や予測等の情報を自動的に集約・抽出するものです。
AIはデータを複合的に分析することができ、人が行う場合と異なりデータのみに基づいて情報を導き出すため、そこから得られる情報は幅広く、精度が高くなります。
従来はデータ分析には高度な分析スキルが必要でしたが、AIを使うことで特段の高度な知識がなくても行えるため様々な業種業態で利用が進んでいます。
この記事は2026年7月に書かれたものです。
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